不動産価格の「異変」:5年前と現在の新築価格を徹底比較

不動産価格の「異変」:5年前と現在の新築価格を徹底比較

不動産価格の「異変」:5年前と現在の新築価格を徹底比較

近年、日本の不動産市場はかつてないほどの高騰を見せています。特に都市部の新築物件は、手の届きにくい価格帯になりつつあり、「5年前だったら買えたのに…」という声も少なくありません。

本稿では、この価格高騰の実態を把握するため、約5年前(2019年頃)の新築物件の価格相場と、現在の新築物件の価格を具体的なデータと要因分析に基づいて徹底的に比較・解説します。


5年前(2019年頃)と現在の新築価格の比較

ここでは、特に価格上昇が顕著な三大都市圏(首都圏、近畿圏、中部圏)を例にとり、新築マンションと新築戸建ての平均価格を比較します。

1. 新築マンションの平均価格の推移

新築マンションは、その価格上昇が最も顕著な分野です。特に、利便性の高い都心部や駅近物件では、5年間で数千万円単位での上昇が見られます。

エリア 2019年頃の平均価格(概算) 2024年現在の平均価格(概算) 上昇率(概算)
首都圏 約5,980万円 約8,000万円 約33.8%
近畿圏 約4,000万円 約5,000万円 約25.0%
神戸市周辺 約3,800万円 約4,800万円 約26.3%

このデータからもわかる通り、首都圏では平均価格が8,000万円に迫り、5年間で2,000万円以上も価格が上がっている計算になります。近畿圏でも1,000万円前後の上昇が見られ、これは単なる物価上昇の範疇を超えた「不動産バブル」に近い現象と言えます。

2. 新築戸建ての平均価格の推移

新築戸建て(建売住宅・分譲住宅)も同様に価格が上昇していますが、マンションと比較すると、上昇率はやや穏やかな傾向にあります。

エリア 2019年頃の平均価格(概算) 2024年現在の平均価格(概算) 上昇率(概算)
首都圏 約3,900万円 約4,700万円 約20.5%
近畿圏 約3,200万円 約3,800万円 約18.8%

戸建ての場合、5年間で600万円から800万円程度の上昇となっており、この背景には、資材価格の高騰建築費の上昇が大きく影響しています。


価格高騰の「三つの波」:要因の徹底分析

なぜ、この5年間で日本の新築不動産価格はこれほどまでに高騰したのでしょうか。その要因は一つではなく、複数の経済的要因が複雑に絡み合った「三つの波」として考えることができます。

第1の波:資材・人件費の高騰(コストプッシュ要因)

不動産価格の基礎となる建築コストが、この5年間で最も急激に上昇しました。

  • ウッドショックと資材高騰: 2021年頃の「ウッドショック」を皮切りに、木材、鉄骨、セメントなどの主要建築資材の価格が急騰しました。
  • 人件費の上昇と「2024年問題」: 建設業界の人手不足と、2024年4月からの残業規制強化(建設業の2024年問題)は、工事費全体を押し上げる主要因となっています。

第2の波:金融緩和と低金利の継続(需要拡大要因)

日本銀行による「異次元の金融緩和」が長期間続いていることも、不動産価格高騰の大きな要因です。

  • 住宅ローンの超低金利: 変動金利型の住宅ローン金利が0.3%~0.5%という超低水準を維持し、借り入れ可能額が増加。消費者がより高額な物件を購入しやすくなりました。
  • 投資マネーの流入: 低金利政策により、国内外の投資家がインフレヘッジ(物価上昇に備える)や、より高い利回りを求めて、都心部の不動産に大量の資金を投入しました。

第3の波:土地の稀少化と都心回帰(供給制約要因)

特に新築マンションの価格を高騰させているのが、優良な土地の枯渇です。

  • 都心部での開発競争: 希少価値の高い土地を巡って大手ディベロッパー間の競争が激化し、土地の仕入れ価格が大幅に上昇しました。
  • コロナ禍後の「都心回帰」: 社会活動の回復により、再び「都心回帰」の傾向が強まり、都市部マンションへの需要がさらに高まりました。

買い手側にとっての5年間での変化

価格が大幅に上昇したことで、買い手側の「購買力」にも大きな変化が生じました。

1. 必要な年収の大幅アップ

同等規模の新築マンションを購入するために必要な世帯年収は大きく上昇しています。

  • 5年前(約6,000万円の物件): 必要な世帯年収(目安)は約750万円でした。
  • 現在(約8,000万円の物件): 必要な世帯年収(目安)は約1,000万円に上昇しています。

物件価格が2,000万円以上上昇したことで、購入の目安となる世帯年収が約250万円も引き上げられたことになります。

2. 「広さ」や「立地」の妥協

予算が限られている層は、購入する物件の条件を下方修正せざるを得なくなっており、住宅の質や住環境の基準を全体的に押し下げている側面があります。


今後の不動産価格の見通し

今後の不動産価格は、建築コストの高止まりと、金融政策の動向に左右されます。

  • 建築コストは高止まりが続く: 人件費の上昇は構造的な問題であり、新築物件の原価(コスト)は今後数年間で劇的に下がる見込みは薄いです。
  • 金利動向が最大の鍵: 「超低金利」が維持されるかどうかが、市場を左右します。金利が上昇すれば、需要が冷え込み価格は緩やかに下落に転じる可能性が高まります。
  • 中古市場へのシフト加速: 新築物件が高すぎるため、今後は築浅の優良な中古マンションへの需要がさらに集中すると見られています。

結論

現在の新築価格は、もはや5年前とは全く異なる購買力を要求する水準にあります。購入を検討する際は、物件価格だけでなく、将来の金利上昇リスクも考慮に入れた、より慎重な資金計画が求められます。

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